大学に入ってから地元を出て移り住んだ憧れの街・京都。
やっぱり京都は街全体の景観が条例で守られていることもあり、どこにいても独特の歴史の匂いを感じます。
実際、ふらっと歩いてみても、神社仏閣はもちろん、伝統的な京都の日本家屋「町屋」や、三条通界隈にあるようなレトロな近代建築など、
100年以上前の建物みたいなのがバンバン建っています。
元々は大正時代に建てられた京都中央電話局の建物で、日本のモダニズム建築の先駆者・吉田哲郎さん設計の鉄筋コンクリート造の洋館です。
L字型の建物の直線的な輪郭に、少し起伏のある連続したアーチ窓とレンガの外壁など有機的な要素が掛け合わされることで、
時代を超えても洗練された印象を与えています。
1983年に映えある京都市の登録文化財第一号に指定されたものの、通信施設としての役割を終えてからは、
大通り沿いの建物以外は取り壊されたとはいえ、5,000平方メートル規模の建物が長らく未使用の状態が続いていでした。
2000年に入ってから大規模リノベーションが行われ、商業施設「新風館」がオープンし、
2016年までの16年間、烏丸御池のランドマークとなっていましたが、昨年2020年6月に新生「新風館」として再開を果たしました。
元々のレンガ造りが印象的な「保存棟」と、建築家・隈研吾さんが監修した「新築棟」とで構成されていて、
以前は野外ステージなどがあった建物の中央広場は、日本の緑も残していこうという中庭になっています。
まるで現代社会から切り取られたような空間になっています。
以前のBELCA賞ベストリフォーム部門を受賞したレンガと青いトラスの組み合わせの無骨さも好きですが、
2020年の改修後は、ファサードや天井に組み木が大胆に使われていて、「和」のあったかさみたいなのが感じられます。
この組み木はサニーヒルズの地獄組などでも見られるように(新風館はここまで複雑な見た目ではないですが、同様の迫力は感じます)、隈研吾さんの得意技というか御家芸なのかな、なんて思いました。
■「サニーヒルズGM日記」
http://sunnyhillsjapan.blogspot.com/2015/05/sunnyhills-at-minami-aoyama_31.html
ただ一様に守り続けるのではなく、時代を取り入れながら歴史を継承していくのを見ると、
まるでその建物の人生を見ているようで、感慨深い気持ちになりますね。
[Data] 新風館
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竣工:1926年(大正15年)
旧名称:京都電話中央局→京都電電ビル西館
名称:新風館
改修:2008年、2020年(隈研吾)
設計:吉田哲郎
伊根町は京都府の日本海側に面していて、重要伝統的建造物群保存地区に認定されています。
同じ丹後地方なら「天橋立」の方が有名な観光スポットですが、「舟屋」の町並みとして有名な場所なのです。
「舟屋」は、その地形がとても重要で、伊根湾は三方を山で囲われていて、四方全ての風とそれに伴う波の影響を受けにくい構造になっています。
特に湾が南向きというのも重要な点であり、日本海とは思えないほど波が穏やかな海域なのです。
年中を通して穏やかな波であることで舟屋を建てることができています。この地形無しに舟屋を語ることはできません。
建物の一階部分が海から舟をそのまま引き込めるような造り(ボックスガレージのようなイメージ)になっていて、
そのため建物の半分以上が海側に張り出たような形になっています。
少しずつ形や大きさの違う舟屋が、まるで海に浮かんでいるように見え、とても幻想的で美しい情景です。
私は初めて行った海外旅行が「水の都」と言われるイタリア・ヴェネチアだったのですが、伊根町が「日本のヴェネチア」と呼ばれるのもうなずけます。
伝統的な街の風景や、水上タクシーなど、自然と共生するなかで生まれ培われた街のカタチに、共通するものを感じました。そんな伊根町の情景について紹介しているサイトもたくさん在ります。私よりずっと上手で綺麗な写真をたくさんあげられています。
■「そこは和風ベネチア!水に浮かぶ京都の不思議な町“伊根の舟屋”とは」
https://rtrp.jp/articles/22422/
伊根町も京都とはいえ3歩歩けば文化財に出会う京都中心地と違い、いかんせん保存対象の建物群の範囲が狭く、
ここを「観光地」として財源を確保し、保存し続けるのは難しいだろうなと感じました。
今は、町に暮らす人たちの趣きがそのまま感じられる場所ですが、ここを京都中心地のようにインバウンドなどを狙って看板をバンバンつくったり、道路をガチガチに整備してしまうと、そもそもの「保存」が叶わなくなる、ということですね。
それを支えるための保存地区認定、なんだなと改めて思いました。
[Data]伊根町の舟屋
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建築:江戸時代中期頃
名称:伊根町伊根浦伝統的建造物群保存地区